中学入試において成績が伸びにくいとされているのが「国語の長文読解」です。持って生まれたセンスとか今までの読書量に比例するから直前の伸びが期待できないとか言われています。
しかし国語の長文読解力は「国語のテストの作り方『作問』」を意識すればすぐに伸びるきっかけをつかむことができます。
You tubeでも線引き(文章加工法)の解説動画がたくさんあります。
国語をあきらめずに、参考にしたら実践をしていきましょう。
国語の勉強の仕方を国語の先生は知らない!?
国語の勉強の仕方を多くの国語の先生は知りません。なぜなら国語の先生は国語を教えることを仕事にする一方で多くの先生が「国語の適切なテストを作ったことがない」人たちだからです。
国語の適切なテストとは、
①平均点を6割に設定できている
②選択問題と記述問題をバランスよく配置できている
③出てくる偏差値や順位が適正である テストのことです。
大手学習塾の6000人以上の規模の模擬試験はこの3つを意識しています。いわゆる公平性と判定性をもつテストを指します。
一方、中学校の中間・期末テストは適切なテストでなくていいといわれています。
近年の絶対評価システムではこのテストで順位や平均点、偏差値を出す必要がないため、授業でやったことの確認ができていて、授業で行ったことを応用させられるかどうかを確認できればいいのです。
中学入試には4大模試といわれるテストがあります。
このテストは授業を行っている先生の中でもごく一部の先生が作問を担当しています。授業を行っていない、テスト作成専門の部署で作成している模試もあります。
この授業担当者が国語のテストを作問していないということは算数・社会・理科の授業担当者の場合と大きく異なります。
国語のテストをどう作るかということはもっともっと意識されていいはずなのに、多くの国語教師は問題文をよく読むといった抽象的な指導をしています。
算数・社会・理科は誰が教えても原理原則は変わりません。先生によってかけ算の答えや応仁の乱がおきたときの年号、水の沸点は当然ですが変わりません。
しかし、国語は先生によって解釈がかわれば問題の答えも変わります。
国語で学ぶべきは一つひとつの文章を理解する、解説をしてもらうことではありません。
問題を作る人『作問者』が問題を公平に作ることができるポイントを見つけるテクニックを学ぶことが大事なのです。
筆者の意見や登場人物の気持ちの読み取りよりも大事な読み取り
筆者の意見や登場人物の気持ちが読み取れないから国語が苦手だ。
私が読み取った意見や気持ちが正しいはずなのに、答えのほうが間違っているのではないか。
国語のテストが終わり、自己採点をしている生徒から聞こえてくる感想の多くは、どうしてその答えになるのか、どうやったらその答えを導き出せるのかがわからないということです。
中には答えが間違っていると言い張る生徒もいます。
これは、学校教育の国語が筆者の意見、登場人物の気持ちに焦点を合わせ、それを読み取るのが大事だと言い続けた結果だと思います。
もし、国語ができるということが国語のテストで点数が取れることだとするのなら、筆者の意見や登場人物の気持ちを理解しようとすることは読解や解答の方向性としてずれています。
国語は、問題作成者『作問者』の意図がもっとも重要です。問題作成者がこの文章をどう読んだかがすべてなのです。筆者の意見や登場人物の気持ちは問題の答えと全く違う可能性もあります。
こういわれると「不公平だ。」と思われる方もたくさんいるでしょう。事実、入試が終わり、解答の速報を出すときに一番もめるのは国語だといわれています。国語のプロの間でも意見が割れるのです。
そうはいっても、あまりにも主観的に問題を作ってしまったら公平性を欠き、適切に合否判定をすることができません。そのため、国語はほかの科目以上に「問題を作れるポイントの制限」「選択肢の作り方の制限」が厳しい科目です。
国語で点数を作るためにはこの作問のルールを知ることが大事になります。
読解範囲と設問番号の関係を知ろう
読解範囲という言葉は耳慣れないかもしれません。
読解範囲とは設問を解くために、段落ごとの読み取りができていればいいのか、文章全体を通しての読み取りが必要なのかを指す言葉です。
段落ごとの読み取りで溶ける問題を「細部読解の問題」、文章全体を通しての読み取りが必要な問題を「全体読解の問題」と呼んでいます。
この読解範囲と設問番号は多くの場合連動しており、前半の問題(全設問の7割くらい)は細部読解、後半の問題は全体読解であることが多く、字数の多い記述問題は全体読解であることが多いです。
このことは問題を解くときに非常に役に立ちます。
国語の長文読解の問題の解き方でよく言われるのは次の3つです。
①文章を全部読んでから問題をやり始める
②問題を先に読んでから文章を読み始める
③文章と問題を行き来しながら問題を解く
国語は先生によってもこだわりのやり方があるため、どれが正解とは一様に言うことは難しいのですが、多くの場合は③のやり方が一番得点率が高いといわれています。
具体的には傍線が出てきたらその段落の最後まで読んでから設問文を読んで問題を解くと、特に前半の問題であれば段落ごとの読み取りができてるかどうかを判定するための細部読解の問題のため、得点にしやすいと思われます。
その時に解けなければ先に進んでしまって、次の段落まで読んだら問題を解くといった形式段落を意識した問題の取り組み方をすると前半部分でのロスは少なくなります。文章を読んでから、あるいは設問分を読んでからだと結局忘れてしまっていることが多く、二度手間になることで時間のロスが大きくなります。
設問文の前半と後半のどちらが得点率が高いかを把握すると、どの読解範囲が得意なのかを知ることも可能です。
設問別攻略法(選択問題の正しい解き方と復習方法)
選択問題はよく「消去法で解く」と言われています。これは半分正しく、半分間違っています。
選択問題で大事なのは、「文章中から答えの根拠を探す」ことを徹底することです。思い込みや想像で作った理屈だと、正答率はかなり下がります。思い込みが作問者の意図とたまたま合っていれば点数は高くなるのですが、たまたま間違っていれば点数が低くなってしまい、再現性がとれないテストになります。
消去法だと2択までは絞れるけれども、そこで迷って間違えてしまうということは本当によくお聞きします。これが消去法の限界です。明らかに間違えている、言い過ぎていたり逆に本文中に言及されていない選択肢は消去法で消せるでしょう。
2択に残った選択肢はどちらも正解に見えます。この場合は消去法ではなく、本文を言い換えた表現を適切に使った選択肢が答えになります。
選択問題で特に受験生が徹底しなければいけないのが、国語の長文読解の唯一の条件を守ることです。
国語の文章には冒頭に必ず以下の一文があります。逆にこの一文がない長文読解はテストとして成立していません。その一文とは以下の一文です。
「次の文章を読んで後の問いに答えなさい」
この一文は飾りではありません。この一文は次のように言い換えることができます。
「次の文章はある作品や論文の一部分を切り取っています。本文の前にも後にも文章がありますが、今回の答えについてはこの切り取った部分のみを根拠にして答えなさい。」
すなわち、文章に書かれていないことを根拠に使ってはいけないということと、この文章の先には確かにこんな展開になっていきますといった選択肢は切り取った部分のみを根拠にするルールに反しているから選んではいけないことを守らないといけません。
昔の話ですが、ハリーポッターが大ベストセラーになったときにある塾の模擬試験でハリーポッターを本文にした国語の問題がありました。生徒たちはハリーポッターファンが多かったため、大喜びでテストができたと報告してくれていました。
しかし、ふたをあけると国語の平均点は前回の模試を下回る結果となり、その原因はこのハリーポッター問題でした。生徒たちは茫然とし、問題が間違えているという生徒もいました。
こんなことが起きた原因はずばり、先の展開ではこうなるという選択肢を選んでいる生徒が多かったためでした。
文章内に答えの根拠は絶対にあるという典型的な例です。さらに大事なのは文章そのものの表現の選択肢ではなく、適切に言い換えられた選択肢である必要があるということです。
復習方法についてもこの作問の方法を利用した復習がおすすめです。
①〇つけをする
②合っていた場合、間違いの選択肢3つは本文のどこを根拠にすれば間違いだと判断できるかをマスターする
③間違っていた場合、正解の選択肢を〇にするためは文章のどこを読めたらよかったかを逆取材する。
このように〇つけをしてからが国語の勉強のスタート。この文章をどのように読んだらいいかを振り返らないことには別の文章でも使えるテクニックの醸成になりません。
設問別攻略法(記述問題の正しい解き方と復習方法)
記述問題は以下の手順で書いていきます。
①絶対に使わなければいけない言葉
②その言葉は筆者にとって肯定的な評価か否定的な評価か
③2つの文章ができたらそれをどのようにつなぐのか
文章をいきなり書くことは難しいため、この記述で必ず使わなければいけない単語を探し、それは筆者にとって肯定的な評価か否定的な評価かを肉付けするという練習をしていきます。
60字から80字だと2つの文章が必要になるため、キーワードが2つ必要になり、適切な接続詞でつなげているかどうかも採点基準に入ります。
記述苦手という人はその多くが読解も苦手です。そのためまずは選択肢問題をできるようにしていくことが最優先です。
文章ジャンル別攻略法(説明的文章)
説明的文章、いわゆる説明文・論説文は答えの根拠がとりやすい文章です。
何を言ってるのかわからない抽象度の高い文章でも、作問できるところが明確なため、文章全体の内容や一部わからないところがあっても比較的得点チャンスの多い文章ジャンルです。
説明文は大きく4つの部分で構成されています。
①筆者の主張
②筆者の主張の具体例
③筆者の主張と反する意見(一般論)
④筆者の主張と反する意見(一般論)の具体例
各段落がこの4つのどの部分なのかを把握しながら読むということが大事になります。とはいえ、把握できれば国語は苦手ではありません。国語が苦手だと把握が難しい。そのため、どの部分に着目するかが重要になります。
着目するポイントは以下の3つ
①段落の冒頭の一文と段落の最後の一文
②逆接の接続詞のあとの一文
③説明の接続詞のあとの一文
【段落の冒頭の一文と段落の最後の一文】
段落の冒頭と最後は重要です。なぜならどちらも段落を分ける理由となった文章だからです。段落は文章の中の1まとまりです。段落の冒頭の一文はそのまとまりを変える理由になる文章、段落の最後の一文はこの段落の役割を終えて次の段落にうつるために必要な文章です。
段落の真ん中部分が全く分からなくても、段落の冒頭と最後がわかると解ける問題があります。
【逆説の接続詞のあとの一文】
逆接の接続詞とは「しかし」「けれども」「だが」に代表される接続詞です。接続詞の学習の中では順接の次に出てきて、前の文章と逆のことを言うときに使う接続詞と言われています。
これは、合っているようで説明不足です。逆説の接続詞は論文を書くルールでは自らの主張の前に置くことになっています。
例文)一般的にはコーヒーの飲みすぎは体に悪いといわれています。しかし、一日一杯のコーヒーには体の免疫力を高める効果があります。
この例文で筆者の主張は何でしょう。コーヒーの飲みすぎが体に悪いということではなく、一日一杯のコーヒーに体の免疫力を高める効果があるということではないでしょうか。
逆接の接続詞を見つけたらその直後の一文は重要です。逆接の接続詞は国語の問題を作成する際にも使われています。問題作成から逆算して考えると、逆接がいかに重要かということがよくわかります。
【説明の接続詞のあとの一文】
説明の接続詞とは「つまり」「すなわち」という接続詞です。この2つは前の内容をまとめていきます。一般論をこの言葉でまとめることは多くなく、たいていは筆者の主張をこの2つの接続詞を使ってまとめていくことになります。
今まで意味が分からなかった文章もこの2つの接続詞を使ってまとめられた文章が理解できれば、たいていの問題の根拠をとれるようになります。
説明文はとにかく「本文の内容が全部わからなくても問題を解くために必要な場所だけは読めている」という状態を目指していきましょう。
説明文の内容はよく理解できたのに、思ったより点数が取れなかったという場合もあります。その場合にはおそらく、理解を進めるために無意識に想像で埋めてしまったか、理解が進みすぎてこの文章の先の展開や論旨から根拠をとってしまったかのいずれかです。
いずれにしても論説文は得点源です。あきらめずに問題に取り組みましょう。
文章ジャンル別攻略法(文学的文章)
文学的文章、いわゆる物語文は「読みやすいけど点数にしづらい」文章です。
難関校では物語か次に説明する随筆がよく出題されます。なぜなら論説文は前述したとおりテクニカルに解けてしまい差がつかないからです。
物語の難しさは根拠の取りづらさでしょうか。作問者の意図が論説文では限定的かつ客観的になるのに対し、物語文は気持ちを扱うため、作問者の意図に偏りが発生するケースが多いです。
それでも、物語文は以下の事がらをまとめながら読んでいく必要があります。
①5W1Hを意識する
②心情を表す言葉に着目する
③場面の天気や明るさ、温度など情景描写に注意する。
【5W1Hを意識する】
場面設定と物語の進行をおさえるためには5W1Hを抑えることが大事です。
①いつの話か
②誰が出てくるか
③どこの話か
④何が ⑤どうして(出来事)
⑥結果どうなったか
このフォーマットに合わせて読んでいくと、できごととその結果をつかむことができます。
【心情を表す言葉に着目する】
物語は登場人物の気持ちがどう変化していくのかが大事です。心情を表す言葉は追いかけていくこと、この心情を言い換えた言葉が選択肢で適切に使われていればそれが正解の選択肢になります。
心情を表す言葉を使った選択問題は正答率も高いため、確実に得点にしていきましょう。
【場面の天気や明るさ、温度など情景描写に注意する】
国語の物語文の難しさはここにあります。大前提として、物語を作る人は天気や場所、時間のすべてをコントロールすることができます。そして、登場人物の心情を情景描写にこめることができます。
ここを作問者は使います。すなわち、登場人物の気持ちが心情語として表れていない場合、情景描写から類推して問題を作ります。この問題の作り方が根拠として飛躍している場合があり、答えの根拠の取りづらさになっています。
物語文はすべての表現が登場人物の気持ちに通じています。そのため明示されている情報ではなく暗示されている情報を読み取り、その情報を言い換えた選択肢を答えで選べるかがカギになります。
これは慣れていかないと難しいですが、論説文同様に、答えの根拠をとる練習をしていく必要があります。それでも飛躍している選択問題は存在しますが、その問題では差がつかないと割り切りましょう。
論説文もそうですが、本文中の表現を言い換えた選択肢を見つける必要があります。言い換えは作問者のセンスの見せ所です。
受験生はいかに作問者がこの文章をどんなふうに読み、どんな言いかえの選択肢を作ったのかを考える必要があります。
ジャンル別攻略法(随筆)
随筆とは筆者の「体験」とその体験から感じた「感想」部分からなる文章ジャンルです。いわゆるエッセイと呼ばれるものですが、随筆はかなり難しいです。
一般的には筆者の「体験部分」を文学的文章として読み進め、その体験から今感じている「感想部分」を説明的文章として読み進めることが大事になります。
ただ、説明的文章ほど筆者の意見が強くないこともあり、相手に伝えようとする文章でもないため、読み手に配慮した文章表現になっていないことも多く、解きにくい問題も多いです。
随筆は体験と感想を読み分けること、本文中の表現がわからないときには選択問題の選択肢から逆に言い換え表現を探すなどといったテクニックが必要になります。
随筆ではボキャブラリーが特に求められるため、特に設問文や選択肢でわからない言葉は必ず理解・定着するようにしないといけません。
設問文・選択肢の文章は本文と違い、受験生に向けて作成された文章です。その文章中にわからない単語があるというのは、求められている受験生レベルに到達してないと言わざるを得ません。
ジャンル別攻略法(詩・短歌・俳句)
詩•短歌•俳句はほとんどの学校では出ませんが青山学院や慶應中等部、筑波大附属駒場等でたまに出題されており、油断できません。
これらの特徴は、根拠となる情報量が少なく、行間を読む必要があることです。
詩•短歌•俳句の分野は国語が得意な生徒と不得意な生徒で逆転現象が起こる可能性が高いです。
少ない情報量からの類推が必要なため、より作問者の主観に寄った出題になりやすいのですが、逆にきわどい選択肢を作りづらい傾向にあることも確かです。
過去問を見た時に詩•短歌•俳句が出てるのなら必ず過去問演習を繰り返しましょう。
中学受験テキストや模試では扱いが本当に少なく演習量不足による準備不足を起こします。
過去問演習の重要性は別の記事にてお伝えしますが、過去問を早くからやらないといけない理由はこういったテキストでカバーしきれない部分を補うことにあります。
国語を得点源にするために
国語を得点源にするためには、問題を解いた後、まるつけ後に答えの根拠探しをしていくことです。解きっぱなしでは国語はいつまでも不安定な科目です。
算数の次に差のつきやすい国語を安定した得点源にするには、テストの作り方から逆算した準備が必要なのです。
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